「ついつい確認を怠って」「うっかり送付先を間違えて」
恐らく誰もが経験したことのある「うっかりミス」ですが、見積書や請求書ではそういった些細なミスが原因で思わぬトラブルやクレームを招いてしまうことも少なくありません。
「次から気をつけよう」と注意を促すだけでは、いずれ大きなトラブルを引き起こしかねません。
そこで今回は見積・請求業務のトラブルを回避する方法について分かりやすく解説していきます。
トラブル回避に必要な取り組みとは
見積・請求業務のトラブルを回避するには人的ミス(=ヒューマンエラー)、所謂「うっかりミス」を防止する取り組みが必要になってきます。特に「ツールの見直し」や「自動化」の取り組みが非常に効果的です。
人的ミスの予防に「ツール」や「自動化」なんて「ありきたり」だと思われるかもしれません。しかし、ツールや自動化が効果的であることをわかっていながら、Excelや紙ベースで見積・請求を行っている企業は多く存在します。
つまりツールの導入や自動化にかかるコストに対し、見合った成果が得られないと考えている企業が多いということです。果たして本当にそうでしょうか。
なぜ人的ミスは起こるのか
- 送付先間違い
- 入力漏れ
- 請求漏れ
- 計算、金額上のミス
- 日付、期間の間違い
- 明記、条件の記入忘れ
- 社内承認に時間がかかり、顧客・取引先・仕入先に迷惑をかけた
見積・請求業務でのトラブルは左記の通りほとんど人的ミスが要因であり注意すれば防げたものばかりです。
これらのミスは、原因を追究されることなく放置されがちですが、人的ミスは「やるべきでないことをした」「やる必要がないことをした」か「やるべきことをしなかった」ときに起こります。
なぜ「やるべきでないこと」「やる必要がないこと」をしたのか、どうして「やるべきことをしなかったのか」、人的ミスの種類と要因はこのように定義づけられています。
人的ミスを減らす、抑止する対策
結果として同じミスでも、要因が異なればとるべき対策も当然異なります。
では、異なる要因のミスに対してどのような対策を立てればいいのでしょうか。
順を追って解説します。
- 実際に起きたトラブルやヒヤリハットをリスト化する
まず、実際に起きたトラブルやヒヤリハットをリスト化しましょう。
特にヒヤリハットを可視化しておくことは重要です。実際に起きたトラブルは報告されることはあっても、「トラブルになりそうだった」という報告はされないことが多いです。リスクヘッジのためにしっかり把握しておきましょう。 - 要因を考える
トラブル・ヒヤリハットがどの要因の人的ミスかカテゴライズしてみましょう。
- 対策案を検討する
ここでやっと具体的な対策を考えるフェーズです。
【全体】【要因】【(人的)ミス】【不具合】の4つの視点から対策を検討しましょう。
【全体】
要因関わらず、全エラー共通でいえることは「人が関わるからミスをする」ということです。なので、全体的なミスを手っ取り早く減らすには「人の関与を排除・低減」する必要があります。
全体的対策例
- フローの見直し
- ツールの導入
- 作業の自動化
【要因】
ミスの要因そのものをなくす、発生を抑えるような対策をとれば同じようなトラブルも防止することができます。
要因対策例
- 要因1:引継ぎ時、曖昧な伝え方が原因で認識齟齬が生じた(認知エラー)
→引継ぎ項目を定める、共通言語を決める - 要因2:作業が複雑すぎて正しい手順を覚えられない(記憶エラー)
→作業の単純化
【(人的)ミス】
色々な対策をしたとしても「人は必ずミスをする」ものなので「ミスをする」前提の対策が必要になってきます。例えミスが発生したとしても早期に見つけて顧客・取引先に迷惑をかける前に社内で対処できれば、大きなトラブルやクレームに発展することもありません。
(人的)ミス対策例
- チェックリストの作成
- 二重チェック
【不具合】
ミスと同様に「トラブル」も完全にゼロにすることはできません。
そこで重要なのは「トラブル」が起きてしまったときに被害を最小限に抑える対策です。トラブルやクレームが起きてしまったとき、重要なのは初期対応の早さです。あらかじめトラブル発生時の対策を用意しているかいないかでは雲泥の差があるといっても過言ではありません。
不具合対策例
- トラブル時のフローやマニュアルを用意しておく
と、このように対策を立てるにしても闇雲に行うのではなく、トラブルの原因となった人的ミスを分析し、順序立てて対策を検討する必要があります。
人が関わる余地をなくす、少なくする対策が効果的
前述した対策方法の通り、しっかり要因を分析した上で二重チェックやチェックリスト、マニュアルの作成や社内研修など少し手間をかけて対策すればコストもかからず済むようにも思えます。
しかし、果たしてそれらの対策で人的ミスやトラブルの抑制を維持し続けることは可能なのでしょうか。
多かれ少なかれ人員の入れ替わりが存在する環境で、常に二重チェックやチェックリストを作業化せず意識的に実施し、マニュアルの周知徹底や社内研修を高水準で継続することは非常に難しく、現実的ではありません。
結局のところ「人が関わる余地をなくす/少なくする」対策が最も現実的かつ効果的というわけです。
もちろんツールさえ導入すればいいという話ではありませんが、ツールや自動化を取り入れることで、二重チェックなどの取り組みも、より効果を発揮します。また、業務自体の効率化により生産性が向上するというケースもあるので、ツールを導入して得られるメリットは十二分にあると言えるでしょう。
Excelは見積・請求業務に向いている?
さてここで「ツールならExcelで十分じゃないのか?」という疑問がよぎるのではないでしょうか。結論からいうとExcelの見積・請求業務使用はおすすめできません。
Excelは非常に応用の効くツールの為、様々なシーンで使用されています。シンプルな使い方はもちろん、関数やVBAなどを駆使すれば大抵のことは自動化できてしまいます。Excelのスキルをもつ社員がいれば最初だけ作りこみ、以降はフォーマットを使いまわせば…と考えてしまうのも理解できます。しかし「便利」にしようとすればするほど、仕組みが「複雑化」するのがExcelです。
それ故に、特定個人に頼り自動化を進めてしまうとファイルが壊れた場合やフォーマットの修正が必要になった際「○○さんがいないと修正できない」というトラブルに繋がります。
他にも
「どのファイルが最新なのかわかりにくい」
「誰も作業していないと思ったら、別の人も対応していてファイルが2つできてしまった」
など、ミスを誘う要因が多く存在する為、Excelでの運用はタイトルのパターンや保存場所、担当者のアサインや進捗の共有など事細かにルールを決める必要があります。
結局、ルールや運用フローも複雑化し、ミスをしやすくなるばかりか効率まで悪くなるので本末転倒です。
ツール選びのポイント
では、どんなツールを選べばいいのでしょうか。ツール選びのポイントは3つあります。
- 誰でも運用できる
「属人化」は人的ミスを招く要因になりえます。誰でも使いやすいツールを選ぶことで行動エラー(方法や手順を間違える)の抑止につながります。新人、ベテラン問わず使いやすいツールを選定しましょう。 - 管理/共有がしやすい
見積書・請求書データの管理はもちろんですが、可能なら見積・請求業務のプロセスをまとめて管理できると良いでしょう。
見積・請求書作成後の社内承認や入金のステータス管理など、「見える化」することで認知エラー(見逃す、聞き逃す、勘違いする)や判断エラー(状況把握できない、次に何をすればいいのか判断を間違える)などの抑止に繋がります。 - 作業を自動化できる
作業が単純化すれば、記憶エラー(作業手順を覚えられない/思い出せない)や行動エラーや判断エラーも抑止することができます。
業務効率も上がるので一石二鳥ですね。
これら3つのポイントを押さえ、見積・請求業務の機能が備わっているツールとなれば、真っ先に候補に上がるのは販売管理システムでしょう。また、最近のCRMツールであれば見積や請求業務の機能が備わっているものもあるので候補として検討しても良いかもしれません。
まとめ
たった一桁間違えただけで取引先とトラブルになった、ちょっとした確認不足で二重請求してしまいクレームになったというケースは少なくありません。会社の信用やイメージに影響があるものを軽視することは非常にリスキーです。当事者に注意を促すだけでなく、なぜ人的ミスが起きたのか要因を洗い出し、適切な対策で予防に取り組むことをお勧めします。
人が関与する限りミスは起こります。
だからこそツールの導入がトラブル回避には最も効果的です。人的ミスを低減できるばかりか業務効率も向上できるのであれば、人的リソースを割いて二重三重のチェックをするよりも、よほどコストに見合った成果が得られます。ぜひこの記事を参考にトラブル回避の対策としてツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。