現在、インターネットやデジタル技術の浸透によりモノを売ったら終わりという「売り切り型ビジネス」から付加価値の高いサービスを永続的に提供し続ける「サービス提供型ビジネス」への転換が重要視されています。特に中小企業にとっては競争が激化し市場が飽和状態になる中でサービス提供型ビジネスへの転換を成功させ長期的な成長を実現し生き残っていかなければなりません。
本記事では、顧客志向の重要性と顧客志向における顧客データベースの役割を解説します。
顧客志向とその重要性
顧客志向とは「顧客が求めるものを起点に自社サービスを考えること」です。先に述べたように現在では顧客は多様な選択肢を持つ様になり、単なる製品やサービスの提供だけではなく顧客の期待やニーズを的確に把握し、それに応えることが必要とされています。
顧客志向を持つことが企業にとっては「サービス提供型ビジネスへの転換」を成功させる重要な要素となり、顧客志向を具体化するには以下のような指標が重要となってきます。
重要な4つの指標
- 顧客満足度
顧客が提供されたサービスや製品に対してどれだけ満足しているかを測定します。顧客満足度の高さは、企業が顧客の期待に応えているかどうかを示す重要な指標となります。 - 競争優位性
企業が他社と比較して持つ競争上の優位性を示す指標です。顧客志向の高い企業は、顧客ニーズを的確に把握し、それに合った独自の価値を提供することで競合他社との差別化を図ります。 - リピート率/LTV(顧客生涯価値)
顧客が企業との長期的な関係の中でもたらす経済的価値を示す指標です。顧客の継続的な取引やリピート購買によって生み出される収益を評価し顧客の重要性を定量化します。 - 顧客エンゲージメント
顧客が企業のサービスや製品にどれだけ積極的に関与しているかを示す指標です。顧客の参加度が高いほど、企業との関係が深まり、顧客との相互信頼関係が築かれます。
これらの指標を把握するための基盤となるのが、顧客の基本情報、購買履歴、行動履歴などの情報を収集し統合的に管理できる顧客データベースです。
顧客志向における顧客データベースの役割
顧客データベースは、顧客志向を具体化する上で重要な役割を果たします。
まず顧客の行動や、嗜好、ニーズなどの情報を収集・管理することで顧客の特性やパターンを深く理解することができます。これにより顧客のニーズに合わせたサービスや製品を提供することができ顧客満足度を向上させることができます。
さらに顧客データベースは業務効率の向上にも寄与します。顧客情報を一貫性のある形式で一元管理することで顧客情報へのアクセスが簡単にでき、営業活動、マーケティング施策の計画や実行が効率的に行えます。
また、顧客データの分析結果に基づき経営的な意思決定を行うことも可能です。これにより顧客のニーズの変化、市場の変化や顧客の要求に素早く対応することができ、柔軟性と適応性を持ち他社との差別化を実現することができます。
顧客データベースは企業にとって不可欠な要素であり、顧客志向を実現する上で積極的に活用すべきなのです。
効果的な顧客データベースの構築
顧客情報自体はエクセルを使って管理している企業も多いかと思いますが、エクセル管理の場合、会社全体での共有や同時編集ができず、情報の不足やデータの不整合が生じることがあります。またエクセルは表形式のデータ管理ツールであるため階層的な構造や関連性を表現することができないため、顧客のニーズの変化に素早く気付くことが難しい場合もあります。
これらのデメリットを解消し、効率的な顧客データベースを整備していくためには、顧客情報を中心に関連情報を紐付けて管理できる統合型顧客管理ツール(CRMツール)を活用するのがおススメです。
ここからはエクセルで管理している顧客情報をCRMツールへ移行する手順を例に挙げながら効果的な顧客データベースの構築方法をご紹介していきます。
主な手順は下記4段階に分けられます。
- 顧客データベースでの管理項目の設定
- 既存データ項目の精査
- データの分類・カテゴリ化
- データの統合・以降
顧客データベースでの管理項目の設定
顧客データベースを作成するにあたり、まずは管理項目を決定します。これらの管理項目を適切に整備し定期的にデータの更新と精度の確保を行うことが重要となってきますので、なるべく必要最低限に絞ることをおすすめします。項目が多いと入力の手間が増え、管理自体が煩雑になってしまい運用自体がうまくいかないケースがあります。
一般的に管理項目として以下の項目が挙げられます。
- 顧客基本情報
企業名、担当者名、部署・役職、連絡先、メールアドレスなどの基本的な企業・個人情報。 - 購買履歴
購入製品名・サービス名、購入日、金額、数量など - コミュニケーション履歴
電話・メール、商談履歴、打合せ内容など - 問合せ履歴
サポートチケット、対応履歴など - マーケティング(嗜好・関心)情報
参加イベント情報、アンケート情報など
既存データの精査(データ統一とフォーマット化)
エクセルで管理しているデータをまずは全体的にレビューし、項目の不足や重複などデータの整合性を確認し必要なデータが揃っているかを確認していきます。また、データを統一するために一貫したフォーマットを設定します。例えば日付の書式、文字列の大文字・小文字など。これによりデータベースへ移行した後にデータの整合性や検索性が向上します。
データの分類・カテゴリ化
データの属性を明確にします。顧客の基本情報、購買履歴、マーケティング(嗜好・関心)情報などそれぞれのカテゴリに整理します。これによりデータの検索や分析がしやすくなります。
データの統合・移行
エクセルファイル内の複数のシートやテーブルに分散している顧客情報データを統合します。顧客ごとに一つのレコードとしてまとめ、「3.データの分類・カテゴリ化」で整理した関連する情報を紐づけます。
顧客基本情報から顧客データベースへ移行し、カテゴリごとに整理された関連情報である、購買履歴、マーケティング(嗜好・関心)情報を関連データとして移行していきます。すべてのデータの移行が完了したら、顧客データベースの構築は完了です。
顧客データベースをCRMツールで構築するメリットと得られる効果
企業にとっては顧客データベースの整備には時間と努力が必要ですがCRMツールで顧客データベースを正しく構築することで、多くの効果をもたらします。より効果的な顧客管理が可能となり、顧客との長期的な関係構築や顧客満足度の向上、マーケティング効果の向上、効率的な業務プロセス、競争力の強化などです。
顧客データベースを整備することは顧客のニーズに合わせた製品やサービスを提供することにつながり、顧客満足度の向上にもつながり、「顧客志向」を持ち「サービス提供型ビジネス」への転換を目指す企業にとっては重要な資源であり顧客志向を具現化し、長期的な企業成長と競争力の向上に不可欠な役割を果たします。