DX(デジタルトランスフォーメーション)は現代のビジネス環境において、ますます重要視されています。特に中小企業の経営者たちは市場での存在感を確立し、競争上の優位性を獲得・維持し続けるためには積極的にDX化に取り組むべきだと感じているのではないでしょうか。

DXを成功させるためには、顧客情報の管理を効率化と顧客対応の品質を高めることが必要です。つまり社内全体で顧客とのコミュニケーションを強化し、顧客との関係を向上させることが求められます。

本記事では、顧客プロセス見直しの重要性とその効果を解説します。

DXと顧客プロセスの関係性

まず、DXと顧客プロセスの関係性について、DXの本質となぜ重要とされているかを踏まえて解説します

DXとは何か

経済産業省はDXを以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

経済産業省「デジタルガバナンス・コード」

デジタル技術の活用やツールの導入はあくまで「手段」であり、「デジタル技術の活用=DX」とはいえません。デジタル技術やITツールという手段を活用して、ビジネスの変革を行い、優位性を確立する事がDXの本質です。

DXが必要な理由

DXが必要な理由は、大きく分けて2つあります。

ひとつ目はスマートフォンの普及により社会全体のデジタル化が急激に進んだことです。

インターネットで誰もが簡単に情報が調べられるようになり、ECサイトから購入するのが当たり前になりました。

電子書籍の浸透により店舗型書店の閉店が後を絶たないように、デジタル化していること自体が顧客のニーズである為、企業が生き残るにはデジタル化は必須の条件です。

ふたつ目は少子高齢化や人口減による、消費人口、労働人口の減少があげられます。

消費人口減少から、需要が減り、モノを効率的にたくさん作って売るという物売りのビジネスモデルが崩壊し、サービス提供モデルへの転換が必要になります。

また労働人口減少から、生産性向上が必須課題となりデジタル化の推進が必要です。

これら外的要因によりDXを行わない企業の優位性が落ち、淘汰されているのが現状です。

顧客プロセスとの関係性

顧客プロセスとは、「問い合わせ→情報収集→商談→見積提出→受注→導入(納品)→サポート」などの各業務プロセスにおいて顧客対応を行う為のマニュアルのようなイメージで、企業が顧客接点を円滑に進めるために設計された手順や活動のことを指します。

上述したように、これからのDX成功には「顧客ニーズに合わせたサービス提供」「業務の効率化」が必要です。

そのため、各業務プロセスでの顧客接点の見直し、つまり「顧客プロセスの見直し」が重要であり、切り離す事ができない関係性と言えるのです。

顧客プロセスの見直しの重要性

ここからは、食品メーカーの営業改革(DX)の事例に基づいて、顧客プロセスの見直しの重要性をご紹介致します。

  • Before

顧客である飲食店に対して、営業マンはルート営業で定期的に訪問し、追加注文の有無や、新商品の説明などを行っておりました。 新商品など初回は購入して頂けるものの、なかなか継続的な商売にならないという点が課題となっていました。

  • After

顧客のことを知る為に飲食店のグルメサイトの口コミや、販売したいであろうイチオシメニューや定番メニューを把握し、その上で飲食店の売上が上がるための提案を行うように変更しました。

結果、売上が上がることでパートナーとして認められ、継続的な購入だけでなく、新規メニュー相談を受けるような関係性にまで発展しました。

また、多種多様なメニューに対してどのような提案を行い購入されたのか、システムに登録することでナレッジとして社内で情報共有可能になりました。​

各営業マンは共有された成功事例を参考に提案内容を流用することで安定的に売上を伸ばせるになりました。

この事例では「商談前の準備→商談時→商談後」の顧客プロセス見直しを行うことで「顧客ニーズに合わせたサービス提供」「業務の効率化」が達成=DXが成功した事例です。 このようにDXを成功させる為には、システムを導入するだけでなく、同時に顧客プロセスの見直しも重要なのです。

顧客プロセスの見直しによってもたらされる効果

上述した事例も踏まえて、顧客プロセスの見直しによりもたらされる効果を4つ紹介します。

  • 顧客満足度の向上

顧客ニーズを把握することで、業務のデジタル化により顧客体験(CX)が向上し、期待値に沿えるサービス提供により、顧客満足度の向上が期待できます。

  • 生産性向上

デジタル化により、顧客情報やナレッジの共有、事務作業を効率化し、その分顧客対応等に充てる時間を確保することが可能です。

  • サービスの差別化による付加価値の獲得

上述した事例であれば、現状はメニューに対して自社製品の提案までですが、将来的にメニュー考案まで提案の幅を広げることができれば圧倒的な差別化や付加価値の提供が可能になります。

  • 売上・利益の拡大

そもそもの売上アップに加え、生産性も向上する為、必然的に売上・利益の拡大に繋がります。

まとめ

DX成功には「顧客ニーズに合わせたサービス提供」と「業務の効率化」によって競争力を強化することが重要になります。

「顧客ニーズに合わせたサービス提供」と「業務の効率化」の達成には、顧客視点思考や業務のデジタル化などの顧客プロセスの見直しが必要不可欠です。

また顧客プロセスの見直しにより、顧客満足度の向上、生産性向上、付加価値の獲得、売上・利益の拡大という効果が期待できます。

ぜひ、本記事を参考にDXの実現に向けて顧客プロセスの見直しに取り組むことをお勧めいたします。