経営活動には営業、契約、サービスや商品の提供、アフターサービスなどのフェーズが存在しています。そして、これらのフェーズを通じ、顧客に関する多様な情報が企業に日々蓄積されていきます。
企業の規模によらず、蓄積された情報を一元的に管理し活用することが、業務の効率化に重要です。
またCRMなどのITツールを活用し一元管理することで、業務の効率化だけでなく顧客満足度向上の効果も期待できます。
本記事では顧客情報の一元管理の重要性と実現方法についてわかりやすく解説します。
顧客情報の一元管理とは?
顧客情報の一元管理は、近年、多くの企業が注目する重要なビジネス手法のひとつです。
このアプローチは、企業が取引先や顧客との関係を強化し、効果的なマーケティング、効率的な顧客対応、戦略的な意思決定を支援するために採用されています。
顧客情報の一元管理とは、顧客に関連するデータ、情報、履歴を統合し、ひとつのデータベースやシステムで管理することを指します。これにより、異なる部門やプロセスに散在していた情報が一元化され、効率的な情報共有を実現します。
顧客情報の定義
顧客情報と聞くと、顧客の氏名・企業名、住所や電話番号などの情報をイメージする人が大半ではないでしょうか。
顧客情報の定義は厳密に決まっているわけではありませんが、基本的に「顧客にもとづく情報」はすべて顧客情報といえます。
インターネットが普及し、以前より顧客接点が増えた昨今では顧客情報として管理すべき情報は確実に増えています。
顧客情報の項目例
顧客情報として管理すべき情報とは、具体的にどのような項目をさすのでしょうか。
具体的な項目を紹介します。
企業情報(BtoBの場合)
- 企業名
- 代表者名
- 住所
- 電話番号
- 設立年
- 資本金
- 業種
- 事業内容
- 担当者名
- メールアドレス
- 企業サイトのURL
個人情報(BtoCの場合)
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 性別
- 電話番号
- メールアドレス
- 職業
- 家族構成
上記であげた項目は、いわゆる顧客の基本情報です。
「顧客情報=顧客の基本情報」と考える人も多いのですが、前述したとおり「顧客情報」は「顧客にもとづく情報」です。
そのため、以下のような項目も顧客情報といえます。
問い合わせ情報
- 問い合わせ日時
- 問い合わせ内容
- 回答内容
商談情報
- 商談の日時
- 商談参加者
- 商談内容
- 受注確度
- 見積情報
購入・契約情報
- サービス・商材名
- 個数
- 単価
- 購入日・契約日
- 購入金額
- 納品日
ビジネスモデルによってこれらの項目は増減するため、企業によって更に多くの項目が必要なことも、逆に限られた項目で問題ないこともあります。
顧客情報が散在していると起こる問題
具体例としてあげた項目を管理する際に「企業情報」「個人情報」「問い合わせ情報」「商談情報」…といったように別々のデータベースで管理すると、どのような問題点があるでしょうか。
情報共有の非効率化
異なる部門やチームがそれぞれのデータベースで顧客情報を管理していると、部門・チーム間の情報共有は手間も時間もかかるため、スムーズな連携自体が難しくなります。
例)取引先の営業担当者が変更になったことを営業部だけ把握しており、他の部門は営業部に変更がないか定期的に確認が必要。
業務効率の低下
重複したデータに対して同じ処理をしてしまうなど、業務が煩雑化。
また情報の収集や更新に多くの時間がかかり、業務の効率が低下し生産性が損なわれます。
例)複数のデータベースを探し回って必要な情報を見つけるために時間を費やし、生産性が低下
適切な顧客対応が困難になる
顧客のニーズや履歴を正確に把握できないため、適切な顧客対応が困難になる。
例)サポート担当者が以前のトラブルに対する情報を見落とし、顧客が同じトラブルに再び直面した際に適切なサポートができず、クレームになった。
業務の属人化
顧客情報が特定の担当者に依存してしまい、担当者の不在や退職した際に情報へのアクセスが困難となり、業務に支障をきたしてしまいます。
例)担当の顧客のデータを担当している顧客の問題を処理するため、その社員が休暇中に問題が発生した場合、他の社員はその顧客に適切に対応できない。
顧客情報を一元管理するメリット
前述した問題の解消にくわえ、顧客情報の一元管理が実現するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
ひとつひとつ見ていきます。
顧客ニーズを反映した製品やサービスの改良・ブラッシュアップができる
顧客からの要望などを分析し、自社の製品やサービス内容を見直すのに役立ちます。
情報をマーケティングに活用できる
顧客の購買履歴、行動履歴などの情報を統合的に管理できれば、顧客の過去の購買履歴や好みの傾向などの情報をひとつの場所で管理できます。
これにより、特定のグループに向けたキャンペーン計画の検討や広告を展開するなど、顧客情報をもとにマーケティング活動にいかすことが可能です。
顧客ニーズにあったアプローチができる
顧客の好みや購買履歴にもとづいて提案やサービスを提供できるため、顧客体験が向上し、売上を増加させる機会が増えます。
また、問い合わせやクレームに対する対応も迅速で効果的に行え、顧客満足度の向上が期待できます。
顧客情報の一元管理に最適なツールとは
それでは、どのように情報を一元管理すればよいのでしょうか。
いくつかの案を挙げてみます。
Excel
メリット
- コストがかからない
- シンプルな運用であれば高いスキルは不要
デメリット
- 属人化しやすい
- 情報更新の履歴が残らない
- ファイルの重複など、トラブルが起こりやすい
- データ量が多くなると動作が遅くなる
簡単に思いつく案としては、Excel等の表計算ソフトを利用した情報共有があげられるかと思います。すでにExcelを利用している企業であれば追加の費用はかかりませんし、運用に高いスキルも必要ありません。
ただし、誰がいつどの情報を更新したのかを自分で入力して記録する必要があります。また、管理する情報の標準化や正規化についてもExcelの機能を駆使して実現する必要があり、項目が多くなるほど手間も増えることとなります。
また、マクロや関数などで自動化の仕組みを設定した場合、「Excelに詳しい人がいないと関数が修正できない」という属人化につながりやすいです。
CRMツール
メリット
- 更新者や日時などの履歴が自動で残る
- 一元管理に特化した自動化機能がある
- マーケティングにデータが活用できる
- 効率よく情報管理が可能
デメリット
- コストがかかる
- 導入時に業務整理やIT・デジタルに関する知識が必要になる
- 数あるCRMツールから自社にあったものを選定する必要がある
CRMは顧客情報の一元管理に特化したツールです。提供している企業によって機能は異なりますが、履歴の保存や自動化機能など一元管理を効率よく行えるような機能が備わっている傾向があります。また、購買履歴や行動データの収集・分析が効率よく行えるのでマーケティングにも役立てることが可能です。
Excelと比較するとどうしてもコストはかかりますが、知識さえあれば無料で利用できるOSS(オープンソース)タイプのものや、機能が制限されるかわりに無料で使用できるプランを提供しているものもあります。
ただし、CRMの機能は製品ごとにかなりばらつきがあるため、コストやブランドだけで選定すると「自社の業務スタイルにあわない」というケースも多いので注意しましょう。
長い目で見れば、CRMのほうがオススメ
Excelはコストが低く、高いスキルが不要なため手軽ですが膨大な量の顧客情報を管理するにはデメリットのほうが多いため、CRMでの一元管理をオススメします。
顧客情報の一元管理はツールだけでは実現しない
CRMツールを導入すれば、顧客情報の一元管理が実現するというわけではありません。
前項でものべたように、CRMの機能は製品により非常にばらつきがあります。
まずはポイントをおさえながらCRMツールの選定から導入までの事前準備を進めることがとても重要です。
また、CRMは勤怠システムや請求書発行システムなどのように「導入さえすれば業務効率が上がる」ものではないため、自社の課題分析や運用フローの見直しなどの準備が不十分だとCRMツールの利用が浸透せず「顧客情報の一元管理が思ったように進まない」という事態になりかねません。
導入の失敗を防ぐためにも、ツール選定時は導入までのサポート体制が整っているベンダーなのかという点もしっかりチェックしておきましょう。
終わりに
顧客情報が分散していると業務効率の低下や属人化、情報共有の非効率化、顧客満足度の低下などにつながります。
また、顧客情報を一元管理することで顧客満足度の向上やチームや部署間の円滑なコミュニケーションの実現も期待できるため、ぜひCRMなどのITツールを活用し顧客情報の一元管理に取り組むことをオススメします。
ただし、CRMツールはポイントをおさえて活用しないと最適なパフォーマンスを発揮できません。CRMツールを導入し顧客情報の一元管理化に取り組む場合はIT・デジタルの知識が豊富なベンダーと二人三脚で着実に導入を進めましょう。
より具体的なツールの導入方法や製品選択に関する記事も用意していますので、ぜひ一読いただき参考にしてください。