昨今のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの中で「顧客接点」が重要視されていることから、それらを管理できるツールであるCRMが以前より注目されるようになりました。しかしいざCRMを導入しようと思っても、世の中には数えきれないほどのCRMが存在しているため、その中から自社の要望に沿ったものを選ぶのは至難の業です。

導入後のトラブル、また使われないシステムとならないために、本記事ではCRMを選ぶときのポイントとCRMの種類についてご紹介します。

CRM選定における4つのポイント

CRMの導入費用(外部コストと内部コスト)

CRMに関わらず、新しいシステムを導入する際にはプロジェクトのための予算が決められることが一般的です。当然、会社のシステムとして導入するのであれば決められた予算を上回るような高額なシステムを選ぶことはできません。

逆に、サービスによっては完全無料で利用できるものや月額費用のみで利用できるものなど、比較的コストをかけずに導入できるものも数多く存在します。単純に「そのようなシステムから選べばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、この場合、社内で発生する工数(人件費)について考えなければなりません。

無料や初期費用がかからないCRMの場合、サービスベンダー側の工数がかからないようなサービス設計となっています。そのため、「パッケージ版のCRM」を触れる状態にはしてくれるものの、「自社で使えるCRM」にはなっていません。企業に応じて運用や管理内容などが様々であるため、「自社で使えるCRM」にするためには「パッケージ版のCRM」を自分たちの手で設定していく必要があります。

一見魅力的に見える無料や低価格なサービスは、実際に支払う金額は少なくても目に見えない費用が発生することを念頭に置いた上でサービスを選びましょう。

無料トライアルができるか

いくら予算を定めているとはいえ、実際に触ったこともないCRMに多額の費用をかけるのは誰でも不安です。スマートフォンのデモ機やスーパーマーケットの試食などのように、CRMも選ぶ前に一度試してみたい、と思うのが一般的ではないでしょうか。

その①で解説した月額費用のみで利用できるCRMでは、導入の前に一定期間無料トライアルを設けているサービスもあります。おそらく実際に試している中で「こういうことできないのかな?」などのような疑問が出てくると思いますので、その疑問が解決できるかどうかという点も選定における判断材料の1つにしても良いのではないでしょうか。

サポートサービスが充実しているか

CRM導入はあくまで過程であり、重要なのは「どのようにCRMを活用していくか」という部分です。CRMを活用していくには、対象サービスの知識に長けているサポート部隊がどれだけ支援してくれるかということが重要になってきます。

競合他社の増加と、近年のビジネスモデルの「モノ売り型」から「サービス型」への変革もあり、システム会社が提供するサポートサービスは、ただ単にシステムの不具合対応や使い方だけを案内するようなものだけではなくなってきています。例えば、毎月定例会を開催し、CRMをベースとしたプチコンサルを実施するような伴走型のサービスや、対象顧客に対して専任スタッフを配置し、オンライン等でいつでも相談できるサービスなど、選ぶCRMサービスによって利用できるサポートも大きく異なるため、「自分たちの業務を支援してくれるサポート体制が整っているか」という点もCRMを選ぶうえで重要なポイントと言えるでしょう。

課題が解決できるCRMツールか

CRMを導入するにあたり、何も準備せずシステムを探し始めてはいないでしょうか。もしまだ何もしていないという場合は、システムを探す前にまず課題の整理から始めてください。CRMを選ぶには、まず「こうなりたい」というあるべき論から「こうすべき」というあるべき姿を描いた上で現状業務とのギャップ(課題)を洗い出す必要があります。洗い出された課題を解決するための手段の1つとなるのがCRMとなるため、「どのような課題を解決しなければならないのか」というのが明確になっていないとシステムを探すのは至難の業です。

CRM導入の事前準備についてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、気になる方はこちらもご覧ください。

各種準備によって洗い出された課題から、システムに求める要件を整理していきます。ここで重要になるのは、必要機能を自分たちで細かく決めすぎないことです。この時点ではまだ「CRMでこういうことをしたい」というのが明確になっているだけで十分だと言えます。自分たちで考えた機能をもとにシステムを探してしまうと、視野が狭くなるだけでなく導入後に考えていた機能だけでは足りなかった…などのようなトラブルにもなりかねません。

「CRMでこういうことをしたい」ということの実現方法については、サービスを提供しているベンダーから提案してもらうのが良いでしょう。CRMサービスによってさまざまな実現方法が考えられるため、第三者から客観的に提案してもらうことで、自分たちが想定していなかった機能や仕組みでの解決方法が見つかる可能性あります。気になるシステムがあった場合は、自分で調べて判断するのではなく、一度お問合せしてみてください。

CRMの種類

CRMは「顧客管理」の機能を中心に様々な業務で応用できる仕組みになっているため、様々な特色のCRMサービスが存在します。前述のポイントで絞りこんだ場合でもかなりの数になってしまう可能性があるため、あらかじめ解決したい課題の傾向でカテゴリを絞り込んだ状態から探し始めるのが良いでしょう。

マーケティング型

リード(見込み客)を獲得するためのマーケティング業務の中で必要となる機能が特化しているCRM。チャットボットや顧客の興味関心に応じた自動スコアリング機能など、MA(マーケティングオートメーション)の機能も使えることが特徴。
★ 新規リード獲得やリードナーチャリング等のマーケティング業務における課題が多い場合におススメ

SFA型

案件管理や見積作成、予実管理や日報作成等、売上に直結する営業情報の管理や分析ができることが特徴。近年ではSFAとCRMを分けることが難しくなっており、SFA/CRMとまとめて表記されることも多い。
★ 営業や売上面での課題が多い場合におススメ

コールセンター型

顧客満足度に直結する問合せ管理機能に特化したCRM。FAQ機能や担当者自動振分け機能、問合せの進捗管理機能などが備わっている。近年では顧客からの問合せチャネルが多様化(電話/メール/webフォーム/SNS他)しているため、それらを一元管理できるかどうかも本カテゴリ内からシステムを選定する上で重要なポイントとなる。
★ 顧客満足度や問合せ管理面の課題が多い場合におススメ

バランス型

上記3つのように、一分野に特化した機能が備わっているのではなく、社内業務全体で使える機能が過不足なく搭載されているのが特徴。全社で利用すれば顧客接点を一元管理できる。
★ 社内で生じた顧客接点の情報をまとめて管理し、会社全体で顧客に関する情報を共有し、新規ビジネスの顧客ニーズを創出していきたい方にオススメ

選び方のポイントをおさえて課題が解決できるシステムを選定しましょう

CRM選定で最も重要なのは、「洗い出された課題を解決できるかどうか」という点です。

近年IT技術はますます進化し、AI機能などの最新技術も搭載されているようなCRMも開発されています。このようなシステムは一見魅力的ではあるものの、課題解決の視点から見た時、その最新技術は本当に必要でしょうか。

社内で日常的に発生する課題の場合、最新技術がなくても解決できるようなものがほとんどです。余計な機能があることで逆に使われないシステムになってしまう可能性もあるため、機能の豊富さや知名度にとらわれず、「このCRMで課題を解決できるか」という考え方を念頭に置いて製品を選ぶようにしましょう。